文科学生の卒業論文?卒業制作(学長賞)
優秀な論文と作品を表彰する「学長賞」。短期大学 文科からは杜 朗さんが選出されました。
2025年度受賞論文
状況要因が映画館における座席行動に与える影響
短期大学 文科 心理学コース
杜 朗さん
杜 朗さんのコメント
この度は学長賞という栄誉ある賞をいただき、大変光栄に思います。
本研究は、映画館での座席選びという日常の何気ない疑問から始まりました。調査対象120名のデータを整理し、苦手意識のあった統計解析を用いて客観的な結果を導き出すプロセスには、多くの苦労もありましたが、世代や人間関係によって行動心理が変化することを突き止めた際は、大きな達成感を得ることができました。
一連の研究を通じ、心理学的な視点で物事を論理的に捉える基礎を学ぶことができました。大学進学後もこの経験を大きな自信とし、粘り強くデータと向き合いながら、さらに深い探究を続けていきたいです。
論文要旨
本研究は、映画館という非日常的かつ公共性の高い空間を対象に、座席行動が置かれた状況要因、同行者との関係性、ならびに年齢差によってどのように変化するのかを明らかにすることを目的とした。10代から50代までの男女120名を対象にアンケート調査を実施し、一人で鑑賞する場合と、家族?友人?恋人といった親密な他者と鑑賞する場合の座席選択行動について多角的に検討した。
その結果、個人で鑑賞する場合には全年代を通してスクリーンの見やすさが最も重視される一方、30?50代では隣席の有無や鑑賞環境の質をより重視し、パーソナル?スペースを確保する行動が顕著であることが示された。また、同行者との関係性に着目すると、友人に対しては全年代で高い同調傾向が見られた一方、家族および恋人に対しては年代差が認められ、10?20代では自己主張が、30?50代では相手への配慮や関係維持を優先する行動が多く見られた。
これらの結果は、発達段階に応じた心理社会的課題の違いが、映画館における座席行動という日常的行動にも反映されることを示唆している。本研究は、これまで十分に検討されてこなかった映画館という場面に着目し、年齢と対人関係の双方を統合的に扱った点において、座席行動研究に新たな視点を提供するものである。
指導教員
厚澤 祐太郎専任講師
推薦理由
本研究は、映画館という身近でありながら先行研究の少ない場面に着目し、座席行動を状況要因、同行者との関係性、年齢差という複数の観点から立体的に検討した点で、他の卒業研究と比較しても独創性と完成度が際立っている。とりわけ、日常的な行動の背後にある心理過程を捉えようとした着眼点は優れており、公共空間における対人距離や発達段階の違いを映画館という具体的場面に結び付けた点は高く評価できる。研究手法においても、自作の座席図を用いた質問紙により回答を具体化し、10代から50代まで計120名のデータを収集したうえで、自由記述と統計的検討を組み合わせ、多面的で説得力のある分析を実現している。さらに、映画館における快適な環境設計やサービス改善への示唆を含み、社会的意義も大きい。学術的にも、座席行動研究に新たな対象と視点を加える成果である。研究過程においても、調査?分析?執筆の各段階に粘り強く誠実に取り組み、2万字を超える論文として丁寧に完成させた姿勢は特に優れている。着眼点、方法、意義、完成度のいずれをとっても本学の卒業研究を代表する水準に達しており、学長賞に強く推薦する。
(2026年3月掲載)







