更新日:2025年03月03日
学生トピックス
中国人民大学(中国)交換留学生 報告レポート ~半年間の留学を経て~
国際学部 3年 上野 聡子
私は2024年9月から中国人民大学へ交換留学生として一年間の派遣が決まり、現在留学開始から5か月が経ちました。約半年間の交換留学で得た経験と成長を報告します。
私が留学を決意したのは、自分の可能性を広げたいと思ったからです。入学した時点では留学することを視野に入れていませんでしたが、一年次で専修外国語として中国語を選択し、人生の中で初めて「もっとできるようになりたい!」と強く思ったため留学を決意しました。たったの一年間の学修で留学が可能であるのかと不安もありましたが、一年次の春休みのタイミングで交換留学の募集案内を受け、応募しました。この時点で中国語検定4級(2023年12月取得)とHSK3級(2024年03月取得)を取得していました。
交換留学の選考を通過し、留学が決定して安堵したのも束の間、私は一度も海外に行ったことが無かったので、何から準備するべきなのか分からない状態でした。まずは必要書類を揃えるところから始めました。主に大学に提出する書類やX1ビザ(中国留学1年用のビザ)の取得をしました。確実に成し遂げるために全ての準備に早く取り掛かることをおすすめします!語学力や知らない地に行く不安でいっぱいなのに、渡航ギリギリで手続きをするとさらに不安が加速してしまいます。
中国留学にはビザの取得が必須です。一年用はX1ビザ、半年用はX2ビザです。それぞれ用意する書類は違うので注意が必要です。そしてビザセンターにはできる限り朝イチで行くことをおすすめします。時期にもよりますが、とにかく待ち時間が長いです。私はお昼ごろに行き、そこから三時間ほど待ちました。絶対に早い時間に行くべきです!!
北京に到着してさっそくハプニングが起きました。入国するにあたって必要な「入国カード」の書き方が分からなくて苦戦していたところ、預けていた荷物が迷子になり、探すところから留学がスタートしました。泣き目になりながら何度も尋ねて無事に発見することができました。空港には以前共立女子大学に留学していた学生が迎えにきてくださり、一緒に大学へ行き、报到(チェックイン)や銀行の手続きをしました。留学前から留学先に友人がいることは、交換留学だからこそのメリットでとてもありがたい存在でした。
到着数日後に、筆記と口頭のクラス分けテストがあり、私は初級クラスになりました。汉语言进修生(中国語コース)には欧州の学生が多く在籍していました。日本人は全体的に見てもとても少数です。「留学中に日本人と仲良くなるのはよくない!」と言う人も多くいますが、私はそうは思いません。日本人と交流することで不安を取り除くことや安心感を得ることで気持ちが前向きになりやすいと私は感じています。
人民大学では月曜日から金曜日まで8:00~9:30、10:00?11:30の午前2コマで講義が行われます。精读(総合)、口语(スピーキング)、写作(ライティング)、阅读(リーディング)、听力(リスニング)の5科目です。講義は中国語で行われ、補足説明の時に英語が用いられます。中国語を学びながら、中国文化や教養、そして中国ならではの一般常識などについて学びます。また、自国の伝統的なスポーツについてプレゼンテーションしたり、中国文化に触れるということで太极(太極拳)を学んだりもしました。私のクラスは、アイルランド、フィンランド、ノルウェー、スペイン、カタールなど、様々な国からの学生が多かったため、今まで知らなかった他国の文化についても知ることができました。英語圏の留学生とも中国語で会話をすることがとても楽しく喜びを感じました。
私が留学で一番辛いと感じたことは英語があまり話せなかったことです。中国語を学びに来ているから関係ないと思いがちですが、中国語が通じなければ次は英語で話します。それすら理解できなかった私は絶望的でした。講義においてもクラスの半数以上が欧州からの学生であるため、理解度を上げるために共通語となる英語で説明したりします。その説明がすぐに理解できず、時間をかけて翻訳するところから始めることもありました。また留学生同士のコミュニケーションツールも基本的には英語です。したがって話についていけないことが多々ありました。
今回の留学を通して、言語は人と人を繋ぐツールであり、少しでも話せたら自分の世界が広がることを知りました。世界中の学生が集まっているので知らないことに触れられます。だからこそもっと英語もできるようになりたいと感じました。
中国では大学内の寮で生活することが一般的です。私は东风3楼という2人部屋の留学生寮に住んでいます。シャワーとトイレが部屋の中にあります。ルームメイトはカザフスタンの方でした。彼女も汉语言进修生(中国語コース)の学生であったため主に中国語、そして時折英語を用いて会話します。お互い家族や友人と電話をしたり、その日の講義で学んだことを教え合ったりと楽しく過ごしています。彼女は留学期間が半年間であったため既に帰国しており、現在はまだルームメイトがおらず、次はどんなルームメイトと過ごすことになるのか、少し楽しみで少し不安です。
私が特に感じたカルチャーショックは全てスマホで完結する点と食事に関する点です。
前者は、支払いや予約、オーダーが全てスマホ上で行われることについてです。渡航してから一度も現金を使いませんでした。日本でもQRコード決済やクレジットカード決済が主流になっていますが、中国では私の体験上100%QRコード決済(WeChatpay、Alipay)です。また、ネットショッピングが主流です。淘宝(中国のネットショッピングサイト)などで洋服やコスメ、ペットボトル飲料やお菓子など日用品もすべて揃います。大型ショッピングモールに行くと驚くほど、お客さんがいませんでした。それほどネットショッピングが当たり前なことにも驚きましたし、これら全てスマホ上での完結は便利でとても快適だと思いました。
後者については2つあります。1つ目は飲食店に他店の飲料を持ち込むことができる点です。出かけた際にコーヒーを買って、別の飲食店でそれを飲みながら食事ができます。日本では他店の物を持ち込むことを厳しく制限しているため、驚きました。2つ目は、日本人が自動販売機で飲み物を買うように気軽にテイクアウトのミルクティーなどを買えるお茶文化があることです。様々なお店がありますが、コーヒーよりもお茶の種類がずっと豊富です。大学内に8店舗ほどあります。それほど気軽に立ち寄りテイクアウトできるこの文化は日本にはあまり浸透していないと思い衝撃を受けました。金額も10元?40元(日本円約200円?800円)ほどで低価格な印象です。
人民大学に五か月間の留学をした今、私が感じている自分自身の成長について紹介します。大きく分けて「語学力」と「行動力」の2つがあります。
私は留学が始まった時点では大学の講義で学修したことしか知りませんでした。日本人あるあるですが、文法と読解はできるけれど話す聞くが苦手といった状態であり、会話が成立しないほどの語学力でした。相手が何を言っているのか分からず、苦労しました。留学後、講義が始まると毎日数時間中国語で講義を受けているため、徐々に耳が慣れていき理解できるようになりました。現地生活にも慣れてきた11月頃には、現地で日本語を学んでいる日本語学科の学生と相互学習を始めました。週に一回、30分交代で中国語のみ、日本語のみといった形で近況報告やお互いの趣味や講義について話すという交流をしました。中国には日本に興味がある方や日本が好きな方が想像以上にたくさんいます。そういった学生とも交流し、それから一気に語学力が向上しました。留学当初は何も会話ができなかった自分が、日常会話が問題なくできるようになりました。
私は日本にいた時は割とマイペースで行動を後回しにしてしまう癖があり、課題もギリギリに提出するような人間でした。せっかくの留学なので、時間と機会を無駄にしないようにと考え、留学が始まってからは即行動するようになりました。課題の提出もそうですが、「何かしたい!」と思ったら即行動することを心がけています。例えば、「もっと中国人と話して語学力を少しでも向上させたい!」と思ったらすぐにアポをとります。また、自分から率先して行動するようになりました。これらは留学を通して一番変わった点だと思います。
また、留学中は様々な障害から自由に思い通りにおしゃれができるとは限りませんが、私はどうしてもネイルがしたかったので、現地のネイルサロンに毎月通っています。はじめの頃は中国語ができないので説明するときに写真をみせたり翻訳を使ったりしてネイリストとやり取りしていました。美团(デリバリーやサロンを予約するアプリ)を使って予約し、そこに金額も表示されます。国が違くても女の子がやりたいことは同じなので比較的チャレンジしやすいです!
私が一番後悔していることは、日本のお菓子やフリーズドライをあまり準備しなかったことです。日本にも中華料理をはじめとした中国の食べ物がありますが、本場の味付けは日本の味とは全く異なり、私には合わないことがあり日本食を恋しく感じることが多くありました。そんな時、日本の食べ物を少しでも持っていけばよかったと後悔しました。現地でも購入することはできますが、倍以上の価格です。もし留学する場合は、お気に入りのものを持っていくことをおすすめします!
日本に帰国したことで、多くの中国人観光客が来日しているのだと改めて感じました。帰国時期が旧正月と重なったということもありますが、どこに行っても中国語が聞こえてきます。それほど身近な存在であると実感しました。日本語に混じって聞こえる中国語の会話は驚くほど自然に耳に入り、すっと理解できました。中国語だけの生活から少し離れたことで頭がすっきりした感覚があり、中国にいた時には気が付かなかった自分の成長を感じました。何も理解できない状態から始まった留学生活でここまで伸びたことから、残りの留学ではどのくらい語学力の向上が見込めるのか、より楽しみになりました。
一時帰国中に、共立で中国語の講義を受けていた中国人の先生にもご挨拶にいきました。留学に行く前は中国語で話すことはありませんでしたが、ほとんど中国語のみで話せるようになっていました。先生が成長に驚いて笑ってくださり、留学の成果を改めて実感することができ、本当に嬉しかったです。
残り約4か月の留学生活では、とにかく楽しみ、どんどん交流をして中国語を自分の武器にすることを目標としています。冬休みに日本に一時帰国をしているので二回目の中国渡航です。留学が始まった時よりは慣れていて、様々な感覚も知っています。だからこそ、ますます行動して自身の能力を高めて後悔のない状態で留学を終えたいです。
また、卒論を中国語で書きたいと思っているので、人民大学の学生にインタビューしたり文献を探したりと、学術的な知識を蓄えていきたいです。HSK6級も取得したいです。
私はまだ半年しか経験していませんが留学して良かったと断言できます。国籍や価値観の違う人が多くいる世界はいい意味で常識を覆してくれます。留学生や中国人の学生、先生方は皆優しく真摯に向き合ってくださいます。また多くの中国人観光客が来日していることからも分かるように日本に興味がある人も多くいます。中国で、日本人の友達と出かけた際、私たちが日本語を話しているのを聞いて声をかけられたこともありました。日本で生活していると自国に対して集中的に目を向けがちですが、様々な視点で物事を見て体験することができたので十分意義のある留学だと思います。残りの留学も楽しみながら頑張ります!