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更新日:2017年07月25日

【国際学部】リレー?エッセイ(13) 高野麻衣子「カナダをもとに考える―地域間の「つながり」から「理解」へ―」

カナダをもとに考える ― 地域間の「つながり」から「理解」へ ―

高野 麻衣子


 日本では、たとえば人口集中と過疎化など、都市と地方がそれぞれに抱えている問題が日々のニュースで取り上げられますが、一つの国の中で、ある地域に住む人々が、遠く離れた別の地域に住む人々の社会的な関心やニーズをいかに理解できるでしょうか。私はカナダを研究する中で、このような問題に関心を抱いてきました。


 10の州と3つの準州からなるカナダは、世界第2位の国土を有し、国内には6つもの(!)異なる時間帯があります。この広大な国土において、歴史的にみれば、1880年代に完成した鉄道路線が、まずはカナダの東西とそこに住む人々を空間的に結びつけたといえます。また、政治的には、全国に広がる政党とそこに所属する各州出身の代表者たちが、それぞれの地域の関心やニーズをすくい上げ、政治の場で共有?議論する役割を担ってきました。そして今日では、何よりインターネットやSNSの普及が、地域を越えた人々のつながりを容易にしています。


 このように、歴史を経て人々の空間的な距離感が縮められ、リアルタイムでの情報交換も可能になった今日、他地域の関心やニーズに対する理解も深められてきたのでしょうか。この点に関連して、カナダで出会った西部のアルバータ州出身の学生が、フランス系の人々が多く住む東部のケベック州の大学に入学した際に経験した苦労話を語ってくれました。すなわち、彼女がアルバータ州で学んだ「カナダ史」の知識では、ケベック州で学ぶ「カナダ史」の詳細を必ずしも理解できないのだと。


 カナダでは、“a country of regions”という言葉にも示されるように、地域(州)という単位が際立っています。それというのも、各州が国家に加入した時期がそもそも異なりますし、歴史的な歩みや人口規模、民族構成や経済基盤が、州によって大きく異なるためです。カナダでは、教育カリキュラムの作成は全国一律ではなく、各州がそれぞれに担っていますので、カナダ史の授業で扱われる内容やその重点の置かれ方も一様ではありません。


 このような事情から、上記のカナダ人学生は、それぞれの州の独自性が反映された歴史の授業を理解するのに大変苦労したそうですが、それを学んだことによって初めて、今日、各州が有している関心やニーズ、また、国に対する特定の要求の根本的な背景をより良く理解できるようになったと話してくれました。このことは、現在社会で浮上している問題を、自分が住んでいない他地域の問題としてみるのではなく、皆で共有すべき問題としてとらえ直すきっかけになり、より積極的な問題の解決にもつなげられるのではないでしょうか。


 カナダの歴史を扱う授業では、カナダ国内の地域的多様性やその歴史、また、日本の地域をめぐる問題にも目を向けながら、皆さんと一緒に議論を深めていけたらと思います。


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