Faculty of International Studies
更新日:2019年06月10日
【国際学部】リレー?エッセイ2019(5)上田 美和「はじめまして」
上田 美和
共立女子大学の皆さん、はじめまして。この春、国際学部に着任しました、日本近現代史担当の上田です。
初回なので自己紹介ということで、私の学生時代の思い出話のようなものを書いてみたいと思います。
私の大学時代は、自由を満喫した4年間でした。<放任のなかで学問を知る>とでもいいましょうか。今でも楽しく思い出す科目があります。入学後にまずハマったのがフランス語でした。第2外国語(と私たちは呼んでいました)って、語学そのものだけでなく、その文化にも興味が湧きますよね。当時の私は大学の帰りに、友だちとフランス映画を観まくっていました。『ゴリオ爺さん』を読んで、パリまでバルザックの家や墓を見に行ったりしました。
それから、哲学にハマりました。「哲学書を読んで、レポートを学期中に10本書いて提出」するのがノルマで、地味に厳しい科目でした。今、私が専門としている思想史という分野に親しむきっかけになったと思います。
政治経済学部だったので、政治学科の学生も、専門科目の半分程度は経済学系を取るカリキュラムになっていました。正直いって私は、数学とかグラフとかには「ウッ」となるのですが、歴史学にとって経済は非常に重要なファクターであることを、のちに知るのです。この時やっておいてよかったな、とつくづく思います。
そんな毎日を送っていたある日、私は大学の帰りによく寄っていた書店「あゆみBOOKS」で運命の一冊に出あいます。
それが、岩波文庫版『石橋湛山評論集』(松尾尊兊編)でした。ごまんと本がある店内で、どうしてこの本を手に取ったのだろう。実は思い出せないのですが、その日の私は、なぜかこの本を買って帰ったのでした。
読んで、今までにない種類の衝撃を受けました(その詳細を書くと論文になってしまうので、ここでは省略)。
「面白い」とか「好き」ということばでは説明できない感じでした。「これで卒論を書こう」と直感的に私は思ったのです。その時私の頭に浮かんだ図式は、
石橋湛山
→歴史上のジャーナリストで、政治家
→この本にはこの人の考えたことが書いてある
→政治+思想+歴史
=政治思想史
「そうだ、政治思想史のゼミに入ろう」。
一冊の文庫本から始まって、まさか卒論の後もずっと研究を続けることになろうとは。文字通り自分の人生を変えてしまいました。だから『石橋湛山評論集』は私にとって“運命の一冊”というのにふさわしいのです。
(なお、今年度の3年生の専門ゼミでは、この『石橋湛山評論集』を読みます。)
(写真:これが、私の“運命の一冊”です。ずいぶんヨレヨレになっているのですが、初心を思い出させてくれる一冊でもあります) |
学部3?4年で私は河原宏先生の政治思想史のゼミに入りました。同期で女子は私1名、という環境でしたが、のびのびできたのはゼミのみんなのおかげと感謝しています。
無事、石橋湛山で卒論を書いて政治学科を卒業し、大学院から日本近現代史専攻に入りました。
修士課程を修了し、博士課程の途中で私はイギリスに留学しました。唐突な選択のように思われそうですが、留学のきっかけは居酒屋での会話でした(あ、やっぱり唐突ですかね…)。
私の修士課程の指導教授であった由井正臣先生が、ある日、ゼミの飲み会で(大学近くの「大勇」か「太公望」だったと記憶しています?笑)、私に次のような話をされたのです。
「君ね、この先日本史をやって行くにしても、一度、外国に出なさい」
由井先生は続けて、「イギリスなんか、いいと思うよ」とおっしゃいました。先生は、日本の外に出て、国際化?相対化の視点を獲得することの大切さを教えてくださったのです。
それまでの私は漠然と「一度は留学してみたいな?」と思ってはいたのですが、ただ思っているだけでした。しかし、由井先生に勧められたことでスイッチが入り、“留学”が、俄然現実味を帯びてきました。
留学先で自分は何をやりたいのか。それは自然と決まっていきました。当時の私の研究テーマは“20世紀と石橋湛山”でした。だから、彼に影響を与えた、イギリス近代の社会思想を勉強してこよう。
研究計画書をまとめて、語学試験(スコアを出すのは大変ですよね)、留学試験を受けました。
その結果、私は交換留学生としてオックスフォード大学大学院に行くことになりました。
(写真:留学中、私が所属していたオックスフォード大学Hertford Collegeの「ためいき橋 The Bridge of Sigh」の前で) |
留学中の話は、またの機会にしたいと思います。
こんな私ですから、国際学部で日本近現代史を担当できるのはとてもうれしいです。皆さん、どうぞよろしくお願いします!